おつかれさま ⑮「いつだって春」

なんとなく、答え合わせが始まった印象の第15話。
次回最終回ですから、こんなものですかね~。
じわ~っと物語が収束しはじめています。
あらすじ
久しぶりに実家へ顔を出したクムミョンの様子がおかしい。
エスンの母親としての勘が騒いだ。しつこく話を聞いてみると、会社をやめて新しい事業を始めることにしたので、お金がない、ワンルームに引っ越したという。
間が悪いことに、凍傷で指を怪我したウンミョンを連れて、グァンシクが帰宅した。
子どもたちを心配するあまり、エスンは爆発してしまった。
「ウンミョン、氷を扱うときは気をつけろとあれほど言ったのに!私の忠告は雑音だったのね!クムミョン、新しい事業だなんて。おじさんは事業に失敗して母さんに借りてるのよ!あなたは子どもを持たない気なの!」
クムミョンはこの発言に怒り、不満をぶちまけた。いわく、子育てには金がかかる、自分は裕福な環境で子どもを育てたい、ウンミョンたちが2人目を産めるのはプ・サンギルが金持ちのおじいちゃんだから……。
さすがのグァンシクも、これを聞いて居間から出て行ってしまった。エスンはクムミョンを責めたし、クムミョン自身も言い過ぎたと後悔したが、あとの祭りだった。
このケンカが、グァンシクにまさかの行動をとらせることになる。
グァンシクは、キャベツ畑を売った金で振興開発地の店を購入したのだ。近くにはゴルフ場ができ、大型スーパーや病院も建ち、新しい街ができるという。先行して建てられた2階建てのテナントビルの一角が、グァンシクたちの店だ。
グァンシクの母は、ウキウキしてエスンと開店の準備をしている。
「この店は正真正銘ヤン家の店よね?」
「根に持ってます?オ家の船だっていったこと」
グァンシクが船長になったとき、船を買ってくれたのはエスンの祖母だった。浮かれて騒ぐ義母に釘をさすように、意地悪を言ったっけ。
「ううん、息子が船長として過ごせたのもオ家のおかげだもの。でも50になって市場の運搬人になるとはね……」
「苦労ばかりかけちゃってすみません」
エスンの謝罪は、心からのものだ。
「いいのよ、それよりあんた、覚えてるよね?私があんたをひっぱたいたこと……」
「……もちろん!覚えてますよ。人に叩かれたのははじめてだもの」
義母は、当時のことを申し訳ないと謝った。エスンは笑う。それは帳消しだ、と。ドンミョンを失ったとき、義母は一切自分を責めなかった。そのことですべてチャラになった、と。
「あの金のカエルはまだ私が持ってる。娘じゃなくてあんたにあげるわ。謝罪と感謝の気持ちよ」
「私の姑はお義母さんの姑より上ですね」
ふたりはふふふ、と笑い合った。
ヨンナンは、資格をいかして不動産事務所を開くことにした。判を押した離婚届も準備してある。あとは夫に引導をわたすだけなのだが……。
帰宅したヨンナンを迎えたのは、おそろいの新品の自転車を用意したプ・サンギル。共通の趣味を持てば夫婦仲もよくなる、というサンギルに免じて、一度だけサイクリングにつきあうことにした。
しかし、結果はさんざんだった。わかっていたこととはいえ……。
ヨンナンは粛々と別居の準備をし、協議離婚は成立した。
「一度も俺を好きだったことはなかったのか?」
「好きじゃなかったから、生活してこられた」
夫の度重なる浮気は、妻の心を殴りつけ、とうとう殺してしまったのだ。ウンミョンのために娘がお金を無心にきたとき、追い返した姿を見て愛想が尽きたと、妻は言った。
壊れてしまった夫婦仲は、二度と戻らない。
一方、エスンとグァンシク夫婦はいつまでたっても仲がよい。グァンシクが店を買ったのは、娘のためでも、息子のためでもない。エスンのためだ。女学生のころ、「あんたと結婚したら一生貧乏確定よ!」と叫んだエスンのため。
「どうして店を買うことをゆるしてくれたんだ?」
エスンは笑う。
「だってあなた、あのときと同じ顔をしてたもの。私は30年前に戻っても、またあなたと駆け落ちするわよ」
だが、50歳の賭けはうまくいかなかった。
不動産詐欺だったのだ。テナントビルには、ほかの店など入ってこない。新しい商業施設や病院なんかも、全部嘘だ。ウンミョンは、父を激しく責めた。
家族の危機を救いに来たのは、クムミョンだ。あちこちに頭を下げて金を借り、積み立てを崩して、当座の金を工面した。エスンは娘が不憫で仕方がない。
だが、クムミョンも黙ってはいられなかった。
「私が家族の大黒柱で支えなんだから、仕方ないでしょ。学生時代から最低でも10万ウォン仕送りしてる。自分で使いたいと思ったこともあったけど」
「そんなことしなくていいと言ったじゃないの……」
「自分が楽になるため送ったの!そんな家族よ。私に罪悪感を抱かせ続けた。なぜ無理して留学させたの?なぜなんでもしてくれたの?生活苦なのに、私だけを見て身を削る親がどんなに重いかわかる?誇りとか言わないで!支えとか長女とか、もううんざり!」
そこまで叫んだとき、突然父の大きな声がした。
「ヤン・クムミョン!」
それだけだった。ただ名前を呼ばれただけなのに、クズ、と言われた気がした。父が娘を叱りつけたのは、これがはじめてだった。
手作りのおかずも持たずにクムミョンが帰ったあと、エスンはグズグズと愚痴をこぼしていたのだが、冷蔵庫に貼られた書置きを見て驚き、涙することになった。
胎児のエコー写真と、手書きのメモ。
「私もホルモンのせいなの。ごめん」クムミョンは、妊娠していたのだ。
クムミョンの初産は、たいへんな難産になった。無痛分娩を予定していたが、胎動がなく、通常分娩に切り替えられた。もしものときに、母と子、どちらを選ぶかと問われ、チュンソプは「妻を」と即答した。お義母さんを呼ばなくては……。
医療者の必死の働きもあり、クムミョンは無事出産することができた。産後、クムミョンが思いをはせたのは、18歳で自分を産んだ母のことだ。医療体制も整っていないなかで、頼れる母もいないなかで、自分を産んだ。18歳で。クムミョンは泣いた。
急ぎかけつけたエスンとグァンシクは、クムミョンの周りに要塞を築くかのように献身的にクムミョンを介抱した。
「僕はお姫様と結婚したのかな?って気になります……」
チュンソプはたじたじだが、ふたりは意に介さない。孫よりなにより、まずは娘が第一だ。
クムミョンの娘の名前は、セボム。彼女が新しい春を運んできた。
買ってしまったものは仕方がない。エスンは不安だが、グァンシクはやる気だ。鮮度のよいイカをどこよりも安く、速く提供する店にしよう!そもそもほかにやれることがないのだ。ふたりの武器は、「誠実さ」しかなかった。
だが、それが当たった。2002年のワールドカップも追い風になった。サッカー観戦で盛り上がっている人たちが、気前よく出前を頼んでくれた。
配達は寡黙な父、仕入れは口達者の母が担当し、店は徐々に繁盛していく。
済州島を舞台にしたドラマがあたったのも大きかった。主演のイ・ビョンホンのファンが日本からわざわざ来店する。彼がおすすめの店として、紹介してくれたのだ。もちろん、店にはサイン色紙も飾ってある。撮影クルーの弁当は、この店の仕出しだ。
極めつけの幸運は、チョリョンが捕まったこと!ウンミョンが盗んだと言われていた、粉青沙器も見つかった。
そしてダメ押しに、有名女優チョン・ミインの来訪と、PR番組。これで繁盛しないほうがおかしいというものだ。
チョン・ミインはかつてグァンシクが人命救助した女性である。彼女が自死しようと海に身を投げたところを、グァンシクが助けた。しかも、救急車に乗せられて物見高い人々が集まるなか、彼は自分の上着をかけてミインの顔を隠してくれたのだ。
生業とはいえ、常に人目にさらされ続けてきたミインにとって、自分を見ないようにしてくれる人は初めてだった。グァンシクのやさしさに感激したミインは、いつかきっと恩返しをしようと心に決めていた。
いまが、そのときだ。
ミインのマネージャーは、彼女の行き過ぎたリップサービスに不満げだが、ミインは意に介さない。グァンシクは誠実な男だ。その誠実さが、とうとう報われる日が来たのだ。
プ・サンギルは、もうひとりの娘の結婚式で、久しぶりに元妻に会った。不摂生な生活で、すっかりお腹が出てきた元夫の姿は、情けないの一言だった。
だが、娘のヒョンスクはすこし評価が変わっていた。
「一応は父親としての役目は果たしてた」
「そうね、食わせてはくれたわ」
「ううん、そうじゃなくて、ウンミョンの件よ」
ヒョンスクに金をせがまれても渡さなかったプ・サンギルは、別の金の使い方をしていた。警察署長にたっぷり賄賂を渡したのだ。ウンミョンを示談で出そうとは思わない。やってもいない罪を認めることになる。絶対に、パク・チョリョンを探し出せ。
金を受け取るだけ受け取って、まともに捜査をしようとしない警察署長に圧力をかけた結果、チョリョンは逮捕された。彼なりのやり方で、娘を助けたのだ。
それに、プ・サンギルは知っていた。遠いあの夏の日、ダンスホールから逃げ出したのは自分の妻だったことを。
朝帰りする自分の帰宅を寝ずに待っていたことも、ヒョンスクは知っている。
「お父さんって、弱い人なのかも。家族が離れていくのが怖くてビビッてたのよ」
ヨンナンはため息をついた。
「クッソ……どこまでも世話の焼ける人ね」
グァンシクは、自分の店を手伝いに来るよう、サンギルを誘った。運動もせず家にこもってばかりではよくないし、なにより、本当に店が忙しくなっていたのだ。
森の中の見捨てられた店に8人の小人が集まり、とうとうベルが踊りはじめていた。
(つづく)
感想
みんなホルモンのせい
なんだろう?別につまんないわけじゃないんだけど、もう終盤にさしかかってきたせいかな、わりとなだらかな気持ち。
クムミョンがエスンにひどいことを言って、生まれてはじめてグァンシクに大声で叱られた時も、あー、まああるよねぇ、そういうこともね……って感じでした。
ホルモンのせいでケンカになっちゃったとはいえ、クムミョンのなかにああいった感情があったことは事実だし、変えられない。
もっと身勝手な親だったら……。金なんかないんだからさっさと社会に出て働け!とかいう親だったら……。
そんな両親だったら、思う存分親を憎んで、環境のせいにして、もっと楽に、自由きままに生きられたかもしれないよね。
両親がものすごく誠実な人で、自分を愛してくれていて、自己犠牲をいとわず、自分を大事にしてくれたこと、クムミョンはもちろん感謝してる。でも同時につらくもある。その気持ちはすごくよくわかる。
作品中、何度もそういう独白があったよね。「私は両親の夢を食べて大きくなった」とか「彼らの緑を食べて木になった」とか。
でもさ、親になったらわかると思うんだよ。もちろん、子どものためにあきらめなきゃいけなかったこともある。でもね、子どもがいたからこそ、素晴らしかった日々があるんだよ。
彼らは、心からそうしたかったから、クムミョンを大事にしたの。それが重荷だったというなら、ごめんね、と謝るしかないんだよ……。
そういうこともひっくるめて、わかっているはずなのに、不満をぶちまけちゃったのはやっぱりホルモンのせいなんだなぁ~。
男性はあんまりホルモンの影響を受けないのかもしれないけど、女性はくるからね。これからの人は気をつけてね。妊娠中もそうだけど、出産後はすさまじいよ。自分でもびっくりするから。産後鬱は程度の差こそあれ、誰でもなるよ。そして更年期は、またしてもしんどいよ……。
自分は子どものためにすべてをささげられなかった親なので、子どもたちには苦労かけたと思う。経済的なことであきらめなきゃいけないこともあったはず。でも、すべてをささげたら、あとから「こんなに自分を犠牲にしたのに……」って子どもを恨んじゃいそうだから、意識的にやめた。だからいまでも、子どもに充分してやれなかった、という罪悪感がある。
いったいなにが正解なんだろうね?わからんなぁ。
プ・サンギルは王子様になれるのか?
一方、自分とお金と女たちだけを大事にして、子どもたちや家庭を一切顧みなかったプ・サンギル。いわれてもしょーがないよな、という罵倒を娘から受けていたものの、実は陰でやることはやっていました。
あの賄賂、いったいいくらあるの~?
わざとらしく「おもーい(ハァト)」とか言っちゃってたけど、たしかに相当入ってたよね。しかも、懐へいれてもなんの心配もない金だって……。
この人の資産って、親譲りなのかな?一応船長してたけど、トドン里の船はほぼプ家の船だっていってたから、元締めみたいなもんなんだよね。女遊びばっかりしてたくせにそれなりにお金はあって、それはそれですごい甲斐性だよな。
ヒョンスクを追い返したあと、ヨンナンに突き放されてキョドってたからさ~。なにかがんばるつもりかな?と期待してたんだよね。だってあのまま終われないじゃん?
ちょっとずつ、本当にちょっとずつ変わっていったプ・サンギル。そう、内面は少しばかりよい方向に。そして外見はずいぶん情けない方向に。
あの!腹!
ひどいよね、あれ。まあ役者さんはなにか詰めてるんだろうけど。だから後ろ姿はけっこうシュッとしてるの。足長いし。
そしてあの!髪!
薄っす!あれは役者さんどうしてるのかなぁ。特殊メイクのウィッグかな?
もうさ~、奥さんが自転車に乗って「やっぱりね。一緒に、の概念がない」って言ったシーンは本気で笑っちゃった。概念がないって……そんな言い方……。そしてその前方で嬉々として自転車をこいでるプ・サンギルがおもしろすぎる。
ただねぇ、あの人、奥さんのサンダルだってわかってて黙ってたわけでしょ。奥さんのいつの間にか「クッソ!」の口癖がうつっちゃってるわけだしさ。もしかしてもしかすると、彼が王子様になれる日が来るかもね。
サンギルが腹黒い男じゃなかったことが救いといえば救いだなー。ソウルの学校いってたのがさいわいしたのかな。絶対、済州の田舎もん!ってバカにされてたと思う。
郡長じゃなかった
そういえば、気になっていたあの美女、郡長なんかじゃなかった。グァンシクが人命救助した人だったんだ。そして彼女は有名人だったのか……。いつ出てくるのか、楽しみにしてたけど、ここまで引っ張ってたんだな。
正直、マネージャーと同様にゲスの勘繰りをしないでもなかった。もちろん、なにもないのは当然のこととして、グァンシクが一方的に好意を寄せられちゃうのかな、とか、こうして港まで会いに来られたことはエスンには内緒なのかな?って。
だが、彼の誠実さはトップオブTheトップクラスで、もう全部エスンには話してた。
ええ!信じてましたとも!(汗)
だってちょっとでもなにかあったら、これまでの物語が根底からくつがえされちゃうもんね。正直者がバカを見る、みたいな世の中はイヤじゃん。誠実に生きてきた人が報われる世の中じゃなきゃね。生きていくのがいやになっちゃうよ。
「思い出のイカスープ」なんて嘘だけど、イ・ビョンホンはロケのケータリングで食べてたみたいだから、まあまるっきり嘘の宣伝でもないし、いいんじゃないでしょうか。天下のイ・ビョンホンを「あの歯並びのいい俳優」扱い、これもおもしろかったです。
「腹ペコとモジャモジャ」おもしろいよ
そういえば余談なんだけど、Netflixで「腹ペコとモジャモジャ」っていう番組があるのよ。なんと、ピ(RAIN/チョン・ジフン)とノ・ホンチョルが大型バイクにまたがって済州島を旅する、という動画なの。
このブログでも「フルハウス」や「サンドゥ学校へいこう」の感想を一生懸命書いたっけ。あの細い目で、にか~っと笑われると、もうダメなんだよ~。みんな彼を好きになっちゃうんだ。ダンスもほんとうまいし、大好き。あっ、もちろんジフニのことです。
ホンチョルさんは初めてかな。あまりバラエティーは観ないので。でも、「バイクにはごちゃごちゃつけないほうがカッコいい!」っていう美学には共感。すごく明るくて豪快な人で、いっぺんで好きになってしまった。「おつかれさま」主演のIUちゃんとも仲良しみたいですよ。
済州のおいしいものもいっぱい食べてるので、ぜひ視聴してみてください。この番組に嘘はないと信じてるよ~。
いつだって春
このドラマは、人生を春夏秋冬に例えて見せてくれたように思うけど、本当のテーマはこれだったのかな、って思う。
人生は「いつだって春」なんだ。心の持ちよう、と言っちゃえば浅いかもしれないけど、自分で自分を縛るのは馬鹿げているし、意味がない。
歳をとって体が思うように動かなくなっても、愛する人への思いは変わらないし、夢だってなくならない。よく保育園児に「大きくなったらなにになるの?」って聞かれて困っちゃうけど、実は、やってみたい仕事、なってみたい職業はほかにもある。
夏のような体力、気力はもうないけど、かといって冬のように枯れて寂しくカリカリになっているわけでもない。実りの秋……というほど収穫を得た気もしないけど、楽しい思い出はたっぷり貯められた。
私たちは、自然と同じように、毎年毎年季節が巡るごとに小さな死と再生を繰り返し、だんだんと、二度と再生することのない本物の死へ近づいていく。
でも、いつだって春なんだ。そう思っていたい。だって、どんなにつらいことがあっても、私たちはなんとか生きていかなければならないんだから。